哲学道場「しゃべり場」

★「しゃべり場」は、当初 哲学道場「しゃべり場」 としてスタートしました。この年の第Ⅲ期は、偶然と幸運をテーマに展開しています。

講座名 哲学道場「しゃべり場」
    -幸運を引き寄せる魔法について話しませんか
                     2012年1月12日  茂木和行
                     
 今回の哲学道場「しゃべり場」は、幸運や成功を引き寄せる”魔法“を題材として、おしゃべりに花を咲かせたいと思います。偶然があなたに運を授ける不思議な力「セレンディピティ」のことをご存知でしょうか。あるいは、思い続けることによって願いがかなう「引き寄せの法則」のことを耳にしたことはありませんか。あなたの日常を振り返ってみれば、必ず思い当たるはずです。さあ、ご一緒に、魔法の世界へ!
 
第一回 偶然、うーん、あなたは、偶然のことをどう考えていますか。
 
テクスト:九鬼周造『偶然と驚きの哲学』(書肆心水)
   ジャック・モノ―『偶然と必然』(みすず書房)
   参考:大島弓子の少女マンガ『四谷怪談』(白泉社)
    参考:パスカル『パンセ』(中公新書)
参考:仲宗根美樹の歌『川は流れる』

<偶然の三タイプ>(個々の言葉の意味は広辞苑による)
① 校庭でたくさんの子供たちが遊んでいる場面を想像してみよう。無秩序の動きのなかで、ぶつかる子供たちがでてくる。個々の人、モノが適当に動いているなかで起きる偶然の出会い。
 独立した因果の鎖が交錯することによって生じる。
(「本質的な不確定性」ジャック・モノ―『偶然と必然』、p.133)
イ、もののはずみ:その場のなりゆき。ことの勢い。「-でそう言ったまでだ」
ロ、ゆくりなく:思いがけず。偶然に。「-もパリで再会した」
ハ、端なくも:これといったきっかけもなく。思いがけず。はからずも。「-大方の御好評を博して」「端なくも無知をさらけ出す」
②何らかの出会いや目的物の獲得を期待しての行為が、極めて低い格率しかありえないような結果を導く偶然。この偶然に出会うと、運がいい、と言う。
宝くじ、サイコロ、ルーレットなどの賭けもこの種の偶然。
(「操作上の不確定性」ジャック・モノ―『偶然と必然』、p.132)
参考:義太夫『朝顔日記』 島田宿での美雪と駒沢の出会い。 
イ、行き当たりばったり:先のことを深く考えず、成り行きにまかせて物事を行うさま。「-の旅行」
ロ、めぐり合わせ:自然にまわってくる運命。まわりあわせ。「-が悪い」
ハ、まぐれ当たり:偶然にあたること。「-のホームラン」
ニ、仕合せ:A、めぐり合わせ。機会。天運。「こは-わろきことかな」「ありがたき-」(伊曽保物語)
B、なりゆき。始末。「その科のがれず、ついには捕えられて、この-」(好色一代男4)
C、幸福。幸運。さいわい。また、運がむくこと。
③何かの置かれた状態や何かの出会いが、いくら考えてもその原因を見いだせないような偶然。なぜ自分は、この時代の、この地域の、一人の人間として生を受けたのだろう、という哲学的な疑問(パスカルはこのことを大きな疑問として提起している)につながる。

イ、 わくらばに(邂逅=かいこうに):たまさかに、たまたま。偶然。
(万葉集9「人と成る事は難きを一成れる我が身は」「三十年ぶりの邂逅」
●病葉(わくらば):夏に紅葉して落ちてしまった葉。どの葉がそうなるのか、まったくたまたまなので、「わくらばに」が、たまさかに、たまたま、となった。間が悪いことに、にもつながる。
ロ、たまたま:A、偶然。ちょうどその折。(源氏物語・槿<むくげ>「-おおやけに数へいられ奉りては」。「-犯行現場にいた」
   B、まれではあるが、時折り。「あの人とは―道で会う」
ハ、ま(間)が悪い:A、きまりが悪い。ばつが悪い
     B、運が悪い。折が悪い
ニ、まん(間):(「ま」の転)まわりあわせ。しあわせ。運。歌舞伎、幼稚子敵討(おさなごのかたきうち)「悦べ~、-が直って来たぞ」

病葉(わくらば)

第二回 お互いの運命観について、意見を交換しませんか。

テクスト:司馬遼太郎『ある運命について』(中公文庫)
     松原一枝『終戦秘史―通化事件 関東軍の反乱と参謀 藤田実彦の最後』(チクマ秀版社)
参考:高山文彦『運命―アクシデント』(文藝春秋)
   木田元『偶然性と運命』(岩波新書)

運命:人間の意志にかかわりなく、身の上にめぐって来る吉凶禍福。それをもたらす人間の力を超えた作用。人生は天の命(めい)によって支配されているという思想に基づく。
めぐり合わせ(偶然の②ロ参照)。転じて、将来のなりゆき。
平家物語(2)「当家のー尽きぬによって」。「こうなるのも運命か」「歌舞伎の―運命はどうなるか」
宿命:前世から定まっている運命。宿運。しゅくみょう。
天命:①天の命令。上帝の命令。
② [中庸「天命之謂性」]天によって定められた人の宿命。天運。太平記(13)「-にや たがいけん」。「人事を尽くしてーを待つ」
③ から与えられた寿命。天寿。「―を全うする」

★当日の話の追加と声

運命の定義:「偶然な事柄であってそれが人間の生存にとって非常に大きな意味をもっている場合に運命という」(九鬼周造『偶然と驚きの哲学』p.21)

<三タイプの偶然と運命>
1、 独立した因果の鎖が交錯することによって生じる偶然(本質的な不確定性)
2、 宝くじなど、極めて低い確率でしかおこらない偶然(操作上の不確定性)
3、 何の因果も考えられないまったくの偶然 ⇒運命に関係づけられる偶然

●宝くじ購買の誘いに乗る(1の偶然)→1等があたる(2の偶然)→なぜ、彼でもなく彼女でもなくあたったのが「私」なのか(3の偶然)⇒運命への転移
●歩いているところに、スーパーの積み上げた段ボール箱が突然崩れてくる
   客にとっては、1の偶然による災禍。しかし、スーパーにとっては、不注意による
 管理不足。→客はスーパーを相手取って訴訟することが可能。
⇒客は、なぜ事故に遭ったのが「私」なのか、の疑問。スーパーは、なぜ、そのような事故が「うち」で起きなければならなかったのか、の疑問。⇒運命への転移。
●長年住んでいるところに、地震による大津波がやってきて家ごと流される(東日本大震災のような)⇒これはいったい、どのような偶然の組み合わせで起きている、と考えられるのだろうか。夫の転勤でたまたま引っ越した住民(1の偶然)。確率的な現象である大地震発生は2の偶然。しかし、被災した住民の本質的な疑問は「なぜ、あのとき、あの場所に、あのような巨大な大津波がこなければならなかったのか。なぜ、関東や東海、さらには南海ではなく、東日本だったのか」⇒パスカルの哲学的な問いに通じる第3の偶然。⇒運命への転移。

☆ニーチェ『ツァラトゥストラ』のせむしの話。
 「せむしに生まれたことを享受せよ。そうすれば、そこから新しい未来が開けてくる」
☆第一回の病葉(わくらば)の話に関連して
 「わくらばになってしまった葉は、ほかの葉の代わりにそうなることを身に受けてくれたのではないでしょうか。東日本大震災の被災した方々も、わたしたちの代わりにその災害を身に受けたと考えれば、わたしたちは彼らのために何かしなければならないという思いが出てくるのだと思うのです」(受講生Oさん)

●ベートーベンの第五交響曲『運命』冒頭の4小節
「ダ、ダ、ダ、ダー」(ソ、ソ、ソ、ミー)「ダ、ダ、ダ、ダー」(ファ、ファ、ファ、レー)
  弟子のシントラー「冒頭の四つの音は、何を示すのか」
  ベートーベン「運命の手はかく扉をたたく」
 ☆運命を甘受し、力強く未来へ向けて歩いていく決意が秘められている。
  運命の甘受とは、アポロ的な一つの与えられた秩序の受け入れであり、運命を超えていく力とはディオニソス的な生そのものが内在しているダイナミックな創造性である。
ベートーベンは、ニーチェが「音楽の誕生」の中で明らかにしたアポロ的/ディオニソス的な二つの対立図式を、第五交響曲『運命』のなかに融合して現出したと言えるであろう。
冒頭は、その運命の訪れの音を聞いてのある種の不安、おののき、どうなるのだろうかという未知への複雑な感情を表現している。参考:フルトベングラー「ベートーベンと私達―『運命』第一楽章のための注意―」(『音と音楽』芳賀檀訳、新潮社)

第三回 身近で起きた小さな発見・発明についての体験談をお話し下さい。

テクスト:アイラ・フレイトウ『あっ、発明しちゃった』(西尾操子訳、アスキー出版局)
     
イ、テフロンの発見―まったくの偶然の産物
ロ、シリー・パティー物語―意図せざる無意味な誕生物の思いがけない運命
ハ、バタフライ効果のローレンツ―カオス理論発見の物語
ニ、原子力開発とビデオゲーム発明との奇妙なつながり

「チャンスは心構えのある者を好む」(パスツール)

第四回 そういえば、と思い当たるご自身のセレンディピティ、交換しましょう。

 テクスト:澤泉重一『偶然からモノを見つけだす能力―「セレンディピティ」の活かし方』(角川書店)
      宮永博史『成功者の絶対法則―セレンディピティ―“偶然のひらめき”は、失敗のあとにやってくる』
   オードリー・ヘップバーン 映画「パリで一緒に」with ウイリアム・ホールデン

Do you know what serendipity is? He asks?
人生発掘とは何かとたずねる
She shakes her head. What does it mean?
Why, Miss Simpson, I am surprised.
It means ,opening your eyes each morning, and looking at a bright new day,
And going absolutely ape!(胸をわくわくさせる)
Serendipity? (人生発掘?)
Right.
Are you making it up?
No, serendipity is a real word.
Actually it means the ability to find pleasure, excitement and happiness in anything that occurs. No matter how unexpected.
Serendipity!
He explains the word, in a much more fascinating way than I did.
And at the right moment proposes

イ、セイロンの三王子「セレンディピティ」の物語
 ロ、オードリー・ヘップバーンとセレンディピティ
 ハ、モリエール『町人貴族』とセレンディピティ
ニ、セレンディピティの反対はジャパニティ

第五回 心の万有引力―引き寄せの法則について、思い当たることを話し合いましょう。

 思っていることが何でも実現してしまう不思議な力があるという。歴史的に名を成した人たちは、みなこの力のことを知っていて、積極的に活用したともされる。注意しなければならないのは、交通事故など悪いことも引き寄せてしまうことだ。
テクスト:ウイリアム・W・アトキンソン『引き寄せの法則』(林陽訳、
㏍ベストセラーズ、2007年)

第六回 ツキも運の内? ツキに隠れた宇宙の法則について、考えてみませんか。

 女性たちの間で、麻雀がブームだそうですね。こうしたゲームや勝負事で、勝ち負けは技術だけなのでしょうか。そうではない、と名人クラスの人は言います。場を読む力だけでなく、大宇宙の大いなる流れを読むことによって、ツキを呼び込む方法の秘密を探りましょう。
テクスト:桜井章一『ツキの正体―運を引き寄せる技術』(幻冬舎、2010年)

第七回 イメージの力-ナポレオン・ヒルの「成功の法則」について、語り合いましょう。

 雑誌記者ナポレオン・ヒルは、鉄鋼王カーネギーの話を聞いたことがきっかけで、巨富を築く人たちには、共通した「成功哲学」があることを発見しました。それに基づいた方法論を実践すれば、だれでも巨大な富を得ることができるというのです。いまからでも遅くはありません。やってみませんか。
テクスト:ナポレオン・ヒル『巨富を築く13の条件』(田中考顕訳、きこ
書房、2005年)

第五回 「悪運よ、さようなら、幸運よ、こんにちは」-すべてはあなたの選択
力にかかっている? さあ、どう思います。
生きるか死ぬかの境目を決める出来事に遭遇したとき、あなたがどちらの道を進むかは、偶然というサイコロによるのでしょうか。それとも、運命で決まっているのでしょうか。海や山で遭難して生き残った人たちの証言を集めると、それを決めるのは、あなたの「選択」によることがわかってきます。
テクスト:コロンビア白熱教室(DVD)(2012年)
シーナ・アイエンガー教授「あなたの人生を決めるのは、運命?偶然?選択?」