第六回哲学カフェ「空と風、そして大地」

 この日の哲学カフェには、愛知県からわざわざお越しいただいた方の参加などで、馬頭琴の演奏後の「談論」が素晴らしく盛り上がりました。この方は、日本全国70箇所の「哲学カフェ」を巡っているそうで、なんでも、全国には何百箇所もの哲学カフェがあるそうです。

 彼によると、東日本大震災を巡っての議論に典型的に現れているが、地元に比べると距離が離れれば離れるほど、ぬるま湯的で、あさっての議論に堕していく、といいます。なんとも耳の痛い話で、世界中でさまざまな問題が噴出している現代において、地域のポイントとしての哲学カフェが、いかなる意味を持ちうるのか、重い課題を与えられた気がいたします。

 もうひとりの写真家の方は、目の前で肉親を殺された人に、どのような言葉をかけたらよいのか、と、これまた凄まじく重い問いを投げかけてくれました。ニーチェのツァラツストラが、身体の不自由な人の問いかけ「このような私を変えていく、いかなる方図があるというのか。それを解決してくれなければあなたを信じない」に対して「そのままでよいのだ」と答えた話があります。「それがお前の運命だ。そこから始めよ」とのメッセージですが、肉親を殺された人間に対して、このような答えが答えになるのかどうか、フリーズするしかありませんでした。

 以下は、当日の予定稿です。

 本日は、哲学カフェのスペシャル・バージョンとして、馬頭琴奏者NAGISAさんの演奏会をご用意しました。テーマは「空と風、そして大地」。モンゴルの空と日本の空は一つの同じ空なのでしょうか、それとも、モンゴルの空は一つの部分であり、日本の空も一つの部分である、のでしょうか。これは、プラトンのソクラテス対話篇『パルメニデス』において、若きソクラテスと「万有は一つ」を唱えた大哲学者のパルメニデスとが、「知」をぶつけあった大テーマです。

 「万有は流動して一つならず」のヘラクレイトスと「万有は一つ」のパルメニデスは、常に対比して語られてきました。フランスの大ファッション・ブランドのエルメスは、滝の流れを例にして、「変化し続けながら、変化しない、これがエルメスである」と、二人の哲学を使って自社ブランドの本質を見事に言い当てています。

 モンゴルの「空と、風と大地」は、わたしたち日本の空・風邪・大地と、違っていて、違っていない、私たちの中に不思議な郷愁を掻き立ててくれるものがあります。ときに、モーツァルト的な原初の響きを醸し出すNAGISAさんの馬頭琴が、みなさんをどのような世界に案内してくれるのか、ご一緒に楽しみたいと思います。

画像の説明

プログラム

1、四季 モンゴル民謡
2、大地の祈り リボー
3、ラクダの涙 Ch. サンギドルジ
4、Legend of Sky~空の伝説 NAGISA Original
 <休憩>
1、スーホの白い馬 ハスロー
2、Free as wind~ 風のように自由 NAGISA Original
3、走るラクダ ハスロー
4、天馬 ハスロー

NAGISAプロフィール:
 馬頭琴奏者。3歳よりピアノ、ヴァイオリン、サックスを学ぶ。馬頭琴を頼玉龍(ライ・ハスロー)、李波(リボー)、ツェンド・バトチョローン各氏に師事。桐朋学園芸術短期大学、国立音楽院ピアノ調律科および研究科作曲アレンジ科卒業。
 '04年韓国・ソウルで馬頭琴を演奏し一躍注目を浴びる。08年モンゴル・ウランバートルにて第1回国際馬頭琴フェスティバル&シンポジウムで優秀賞。'09年12月 中国・北京で開催されたWCO Friends Forumで演奏し、その模様はCCTV国際チャンネルで放映された。モンゴルの首都ウランバートルに住み、日本との間を往復しながら、演奏活動を続けている。

★NAGISAオフィシャルブログ  http://nagisamorinkhuur.blogspot.jp/