1、ソクラテスの問い「あんた、いったい、何なのさ」

A I、AI、AI…このところ新聞を開けばAIの文字が躍る日がないくらいですね。テレビでも、どこかでAIの特集を必ずやるようになっています。この企画を立てたのが、ほぼ一年前ですが、そのときはまだいまほどAIの情報は巷に溢れてはいませんでした。

 人工知能=AIは、Artificial Intelligenceの訳後です。Artificialは、natural(自然の)に対応した用語で、「自然でない人の手による」「人為的」といった意味が原意です。
 ラテン語のintelligentia (理解)から来ているIntelligenceは、Intelligence-agentが諜報員、スパイを表すように、隠れた情報を掴む、の意味を持っています。それ故か、辞書的には1、知能、理解、知性、…2、知性的存在しばしば神 などと、意味転化していった、と考えられます。
 ですから、人工知能とは、人間の手による自然界にはない知性体、とでも訳すのがその意味合いを正確に表していると思います。

 ソクラテスの問い「あなたは何者ですか」は、ご存知のように、当時のギリシア世界を席巻していたソフィストたちに向けられた言葉です。ソフィストは「徳を教える職業人」とされ、富裕な家庭の子息のための家庭教師として多額な報酬を得ていました。実質的には、ギリシア世界で成功するための方図、とくに弁論術、を伝授するのが彼らの得意とするところでした。ソクラテスには、生きることの本質から離れ、単に社会の階段をあがる方法を伝授する詭弁家しか彼らが見えなかったことから、「あなたは何者ですか」つまり「何をしている人ですか」と問い質したのです。

 その昔はやった歌謡曲「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」(ダウン・タウン・ブギ・ウギ・バンド、作詞・阿木耀子に、「あんたあの娘の何なのさ」という注目すべき言葉が入っています。AIはさしずめ「あんた、いったい、何なのさ」と、私たちに問い質されているのではないでしょうか。さて、みなさんは、AIについてどう答えますか。