1、宇宙からの問いかけ「あなたは、いま、どこにいる」

 私はどこにいるのでしょうか。皆さんにこう問いかけたら、どのように答えるでしょうか。いま、ここ、哲学講座のこの部屋の座席に、と単純に答えたとしましょう。「いま」「ここ」と答えたととたんに、私たちは「いま」とはいつのことですか、「ここ」とはどこのことですか、と問いかける声が聞こえてきます。どこから?そう、遠くの宇宙から。

 それは25光年離れた琴座のベガを回遊する未知の惑星からのものかも知れません。光の速度で25年もかかる遠くの惑星から「あなたは、いま、どこにいるの?」と、ある日あなたに信号が届いたとしましょう。あなたは途端にどう答えて言いか迷ってしまいます。25年前の惑星X氏からの質問に、あなたの答えは25年後のX氏に届きます。
 
 「いま、とは、つまり」とあなたは考え、2,000-4,000億個とも言われる銀河系のなかのあらゆる星の動きを示す絵図を作成し、25年前の地球がそのなかのどの位置にあるかを示すことによって、惑星X氏に示すことになります。X氏は自分が問いかけたときから50年後に、彼(彼女)が「いま」と読んだそのときに、地球のあなたが、どのような状況にあることを知り、さらに、そのときのあなたが「どこに」いるのかも知ることになる、というわけです。
 
 こと座の恒星ベガから、知的生命体の存在をうかがわせる未知の信号をキャッチしたことから、女性天文学者が宇宙のワームホール(虫食い穴)をワープして、その生命体と出会う映画『コンタクト』(原作:カール・セーガン、監督:ロバート・ゼメキス、主演:ジョディ・フォスター、1997)をご覧になった方はおりますか。講座の住人のお一人がDVDを紹介してくれて、私も正月休みに拝見することが出来ました。天文学者カール・セーガンが原作と監修を担当したこの映画は、この広大な宇宙のなかで、私たち「地球人」が決して「孤独な存在ではない」ことが最大のテーマになっています。
 
 父親に教えられた無線通信で、外のひとたちとの交流に熱狂していた主人公エリーは、大人になって天文学者となり、地球外生命体とのコンタクト実現に夢中になります。あるとき、ついに雑音とは思えない信号をキャッチし、それが1と自分自身しか割り切れない素数の列(1,3,5,11…)になっていることに気づきます。やがて送られてくる信号は複雑になり、そこにこの未知の生命体が存在すると思われる天体までワープできるマシンの設計図が含まれていることを発見するのです。

 映画の設定時期は、スペースシャトルの爆発事故(1986年)後、アメリカがソ連の宇宙ステーション・ミールに頼っている1990年代後半そのままで、映像にはミールに乗った出資はと交信をする様子も使われています。

 ワープマシンに乗ったエリーは、宇宙の美しさに言葉もなく「詩人が来るべきだった」と涙を浮かべます。やがて到着した海辺のような場所から、銀河系が手を伸ばせば届くかのように頭上に存在します。そして海辺を歩いてエリーに近づいてくる一人の「人間」の姿。それは何と、亡くなったはずの彼女の父でした。

 さて、それからこの物語がどのようなエンディングを迎えるのか。それは是非とも、映画をご覧ください。