1,民主主義は劣化しているか

 今回の講座は、「データ・アルゴリズム・ポエムを使ったビジネスと公共政策の想像とデザイン」を専門と自称するイェール大学助教授にして、日本では半熟仮想株式会社代表の成田悠輔氏の『22世紀の民主主義』をテキストとして、展開する予定です。

 「データ・アルゴリズム・ポエム」といった日常語ではなじみのない用語を使ったり、「半熟仮想株式会社」などというふざけた感のある会社代表、などという肩書を立てたり、片目はマル、片目は四角の縁取りをした眼鏡をかけたりと、奇妙な知識人としか思えない成田氏ですが、ユーチューブなどのSNSで歯に衣着せぬ自由・奔放な発言で登場し、いつのまにか大手テレビ・メディアで重宝がられる存在になっています。

 「現場第一主義」を信条として育ってきた私のようなジャーナリズム出身の者は、データの解析から世界のあり方を解読する「データ第一主義」的手法は、正直なところ好きにはなれず、いま一つ信用できない、の思いを強くします。しかし、「民主主義のあり方」を問うようなテーマに対しては、ジャーナリズムの眼はせいぜいが「民主主義」の「ほつれ」や「くびれ」あるいは「亀裂」を見るだけで、体制としての「民主主義のあり方」についてうんぬんすることには限界があることを感じています。

 本講座はお休みしていますが、私たちの同人である日巻敏夫さんが、今回の大テーマである民主主義をめぐる諸問題に関する朝日新聞の二つの特集記事を紹介してくれました。

 一つは、昨年12月24日(土)の朝刊15面「ともしびオピニョン&フォーラム欄異論のススメ「民主主義がはらむ問題」と題しての佐伯啓思京都大学名誉教授によるコラムです。その趣旨はサブタイトルの「民意の実現を求めればポピュリズムに傾く自壊しかねぬ危うさ」に現れています。

 いま一つは、1月8日(日)の朝刊1面2面の「ともしび わたしのよりどころ」頁における「データが導く『民主主義』?」です。今回のテキストである成田悠輔氏の『22世紀の民主主義』が冒頭に引用されており、膨大なデータをAIに解析させ政策を決めて行く未来像を危惧する内容は、同氏の主張する「無意識データ民主主義」への批判ともとれます。

 「民主主義とは何か」について、アメリカ政府の機関「AMERICAN CENTER JAPAN」が、「民主主義(デモクラシー)」の語源は、ギリシャ語の「デモス(人民)」である。に始まる、実にわかりやすい説明をあげています。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』による、ギリシア語付の以下の解説も資料として付記しておきます。
 
 「デモクラシー」(democracy)の語源は古代ギリシア語の δημοκρατία(dēmokratía、デーモクラティアー)である。「人民・民衆・大衆」などを意味する δῆμος(古代ギリシア語ラテン翻字: dêmos、デーモス)と、「権力・支配」などを意味する κράτος(古代ギリシア語ラテン翻字: kratos、クラトス)を組み合わせたもので、古代ギリシア語で「人民権力」「民衆支配」、「国民主権」などの意味がある 。

 まずは、これらの資料を参考にして、民主主義をめぐる諸問題の入り口と致しましょう。