2、ディープラーニングごっこ、しませんか

 前回は「AIは感情を持つようになるか」「嘘をつくAIができたらどうなるだろう」「AIの普及は、間違いなく管理社会強化につながる」「AIと動物の知能は外部をもたない。外部をもつのは人間だけ」といった、奥深い話を皆さんから頂戴しました。

 ディープラーニング(深層学習)の方法をカナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン(現・名誉教授)さんが考え出してから、一気にAIの能力がグレードアップしたそうですね。日本経済新聞が連載「華麗なるAI人脈」 (2019年9月3日開始)で、第一回に「ゴッドファーザーの革命」「2人の弟子と雌伏30年」「深層学習 世界を変えた」のサブタイトルをつけて紹介しています。「ネコをネコ」と見わける画像認識が、エラー率25%代に留まったままだったAIの世界を、一気に誤差率15%近くに導き、注目を浴びた手法です(松尾豊『人工知能は人間を超えるか』角川選書、2015.3、pp.147)。

 これまでのAIは、人間が組み込んだ膨大なデータを、人間が与えた特徴(このタグづけ作業をする人をゴーストワーカーと呼び、陰の低賃金労働者として問題になっています「日経新聞」2019.9.11)に従って処理を続ける「機械学習」と呼ばれる方法でした。神経細胞の働きによって学習する人間の脳の仕組みを真似して、ニューラルネットワークをコンピュータ内に組み込んだ仕掛けがディープラーニングです。

 さまざまなネコの画像を人間の手で入力する必要は変らずにありますが、コンピュータが特徴を抽出してどんなネコの画像を見せても「ネコ」と当ててくれます。人間は、小さいころから、さまざまなネコの姿を実地に見たり聞いたりして、やがて子どもでさえイリオモテヤマネコを見てネコの仲間と判断するようになります。時間をかけて学んでいる人間の作業を、膨大なデータを読み取らせて、短時間で画像認識できるようになったのが深層学習を身につけたAIなのです。最近は、海外の出入りで、パスポートの写真を読み取らせ、目の前の人間の顔と照合する方式がとられるようになっています。つまりAIは、いつでも、どこでも、どんな格好をしていても、それが「私たち自身」であることを見破るほどに進化したのです。

 AIがやっていることを、犯人の似顔絵を作る作業に例えるとわかりやすいと思います。

 犯人を見た人は、イメージとしてその人の「顔」を覚えています。似顔絵を書く人は、その人が「まる顔」なのか「馬顔」なのか、目は大きいか小さいか、鼻は高いか低いか、唇は厚いか薄いか、などと聞いて行くでしょう。その話を元に描いた顔を目撃者に示し、「目はたれ目だった」「アゴは尖っていた」など、新たな情報を付加し、これを何回も繰り返して修正し、やがて「これなら犯人とそっくりです」と目撃者が納得した時点で犯人の似顔絵の完成です。AIがやっている深層学習は、つまるところそんなことです。

 差し戻しのある三審制の裁判制度は、「繰り返し学習」とも言えるディープラーニングの現実例とも言えます。無数の判例を入力することによって、裁判はむしろAIにまかせるほうが感情や主観に左右されがちな人間より、客観的な判断ができると一見思われますが、さてどうですか。あなたが思い当たる身近な深層学習の例もあげてもらいましょう。