2、常若の国のモーツァルト
今回は、アイルランド妖精譚の語り部、
吟遊詩人の高畑吉男さんによる特別なお話の場を用意しました。オペラ『魔笛』に象徴されるように、モーツァルトはおとぎ話が大好きでした。それなら、死後の世界に、アイルランドの妖精たちが治める国に招いてみたらどうだろうか、という発想で、語り部の高畑さんに自由に語ってもらうことにしたのです。東洋人で唯一の「ストーリーテラーズ・オブ・アイルランド」の称号をお持ちで、毎年夏になると、アイルランドに渡り、各地を歩きまわっては妖精話を地元の人たちから集めているのだそうです。

高畑さんによると、アイルランドの死後の世界は、常若の国と言います。そこでは、永遠の若さが保証され、年をとらないのです。ビールの川が流れていて、自由に飲むことができます。善人も悪人も差別なく、死んだあとはこの常若の国に行けるそうですが、ただし、ビールの川でビールを飲むときは、善行をほどこした人たちはジョッキで飲めますが、悪いことをしてきたひとたちはおちょこだそうです。さて、どこまでが真面目な妖精譚なのか、わからないところが妖精丘の吟遊詩人・高畑吉男の真骨頂なのでしょう。
夜中に漁にでた漁師が、奇妙なお祭りの現場に出くわし、おかしいと思ってよく見ると、そこにいるのは村ですでに死んだ者ばかりだった話。王様と世継ぎの王子の前に美しい妖精が現れ、世継ぎの王子に妖精の国にくるように誘いかけます。王子はいくら食べても減らず、それだけ食べていれば生きられる不思議な林檎を与えられます。妖精の国に行くこととを反対していた王様も、ついには折れ、王子は妖精の国へと旅立ってしまう話。アイルランドの各地には、小高い丘の上や牧場に、石組みの墓のような遺跡が無数にあって、こういうところが妖精の出口、入り口だそうです。
何百と言う妖精譚が、
頭の中に入っているそうで、お話の種はつきないとか。
高畑さんは、通津浦々のカフェなどで、お話会をしています。興味のある方は、時期、会場などをHPでご確認ください。
妖精丘の吟遊詩人・高畑吉男のページ http://www.oberon-kingdom.jp/
お話のなかで、墓から掘り出されたというモーツァルトの頭骸骨のことが紹介されました。
2006年1月10日(朝刊)の読売新聞 に、写真付きで紹介されている記事を参考までにあげておきます。
<DNA鑑定「家族」と血縁なし>

オーストリア国営テレビは8日、ウィーン古典派の大作曲家モーツァルト(1756~1791)のものとされてきた頭蓋骨についてのDNA鑑定結果を明らかにした。それによると今回の鑑定でも、1世紀にわたって続いてきた頭蓋骨の真贋(しんがん)論争に決着をつけることはできなかった。
モーツァルトのものとされる頭蓋骨を持つ法医学者
(オーストリア国営テレビ提供)=AP
頭蓋骨は、1902年以来、モーツァルトの生地ザルツブルク*にある国際モーツァルテウム財団が保管している。鑑定には、インスブルックの法医学研究所と米軍遺伝子鑑識研究所のチームが合同で当たった。
鑑定では、ザルツブルクにある「家族の墓」から、祖母および姪(めい)のものとされる遺骨を掘り出し、頭蓋骨の遺伝子と比較した。だが、いずれも血縁関係を示す一致が見られないという意外な展開になった。「家族の墓」とされた場所が、他人の墓だった可能性も浮上した。
35歳で早世したモーツァルトは、貧しい人々用のウィーンの共同墓地に葬られた。この土地は10年後に掘り返され、モーツァルトの遺骨は散逸。だが、「墓掘り人によって頭蓋骨は回収された」と言われ、20世紀になって最終的に同財団の手に渡った。