3、なりたい動物-カラスになる

 前回も、皆さんから、「動物と私」に関する楽しい話をたくさん頂戴しました。「電車で目の前に座っている人の顔は何の動物だろうか、と想像するのが習い性になっています。わかりやすいのはカバ顔。美男美女は、動物へのたとえが浮かんできません」「母がネコ型で、自分の好きなように生きてきた。私は、どうも父似のようで、攻撃的、しいて言えば狼かな」「干支の動物は、よくその人に合っている気がします。母も姉も丑年でノホホンとした牛、酉年の父は働き者の鶏、私は猪で猪突猛進」、…
 
 イギリスの博物学者にして作家、画家のシートン(1860-1946)といえば、何といっても「シートン動物記」の作者ですね。「狼王ロボ」などたくさんの動物についての観察記を書いていますが、ここでは、目とくちばしの間に銀白色のはん紋があるカラス「シルバースポット」を題材に、「カラスになって」みたいと思います。

 カラスは都会に住む我々にとって、最も身近な野生動物ですし、日ごろから彼らの知恵ものぶりに興味を持っておりました。ごみをあさる姿を見るたびに、逆に彼らを訓練して、ごみの片付けに協力させたらどうか、などといつも考えていたのです。

●私はシルバースポット、カナダ・トロント郊外、松の森で覆われた丘キャッスル・フランクを本拠地としている。ここで私は、もう20年もリーダーを務めている。本拠地の森と64km離れたオンタリオ湖西岸までを縄張りとし、200羽のグループをまとめ、安全と繁栄をもたらすのがリーダーとしての私の役割だ。
 
 私は一群を率いて空を移動しながら、四方八方に目を配り、「声」で仲間たちに指示を飛ばす。もっとも大事なのは、地上での人間の様子を正確に把握し、素早く、正確に知らせることだ。人間の食べ残しは私たちの大切な食糧だが、そんな私たちを人間は好ましくは思っていないことは百も承知だ。まず見分けなければならないのは、彼らが銃を持っているかどうかだ。
 
 私たちの群れは、古い川すじである谷ラビーンの上空に沿っていつも移動する。ラビーンにかかる橋の上にいつもみかける人間が私たちの群れを見ている。あの人間は銃で私たちを威嚇することはないことがわかっている。

 私は仲間たちに「カアー、カアー」と鳴きかける。「すべて大丈夫、前に進め」の意味だ。しかし、あるとき安全なはずのその人間が、何かを試そうとしている気がして危険を感じ、「カウ」(注意せよ)とひと鳴きして、高度を上げた。このときは、その人間が銃を持っていないことが確認できたので、頭上6メートルの高度で橋の上空を通過した。

 次の日、同じ橋の上で、今度はその人間が銃のようなものを持って、私たちの群れを狙っているような気配があった。私は「カ」(あぶない)と声をあげ、高度を15メートルにあげた。さらに翌日、今度は本物の銃を持って、その人間が橋の上にいた。私は「カカカカ カウ」(とても危ない、銃だ)と仲間に危険を知らせ、銃がとどかない高度まで急上昇した。

 人間たちは何を考えているのか、油断できない。私たちの「言葉」もいつ解読されるかわからない。暗号化の試みもしなければならないと思っている。