3、原佳大ピアノ・コンサート「モーツァルトのひらめき」

           ナンネルの楽譜帳を読み解く

 「モーツァルトの食卓Ⅲ」の第三回は、恒例の原佳大先生による「レクチャー・コンサート」です(於 聖徳大学10号館14階ホール 2015.1.30)。

原先生

 パリからロンドンまでを一家で旅した西方への大旅行図にそれぞれの地で作曲されたケッヘル番号を重ねながら、「k1の謎」など、ナンネルの楽譜帳から読み解けるモーツァルトの”秘密“を、軽妙なトークといつもの素敵な演奏で、原先生は私たちを魅了してくれました。

 ナンネルの楽譜帳は、父・レオポルトが、モーツァルトの姉・ナンネルのために用意したものですが、いつのまにかモーツァルトのための楽譜帳になっていきました。たとえば、「このメヌエットとトリオをヴォルフガングは、1761年1月26日、彼の5歳の[誕生日]の一日前に、夜の9時半、30分間で学ぶ」などと書かれています。モーツァルトがわずか5歳のときに作曲したKV1cの『アレグロ へ長調』は、『魔笛』のパパゲーノのアリア「おいらのお望みは娘か恋女房!」にそのメロディとリズムがそのまま出てくることで知られています。(よろしければ、次のサイトで楽譜付きの演奏が聴けます)

 https://www.youtube.com/watch?v=UsoitL3I0fY

 天才モーツァルトは、5歳のときから“モーツァルトだった“とも言えますが、この日の原先生は、モーツァルトがロンドン滞在時代に作曲したKV15a-15ssのなかからKV5uやKV15ooなどをとりあげて、数々のすばらしい天才の「ひらめき」を見せながら、中途半端に終わっている箇所があることを、「これはぼくの演奏ミスではありませんからね」と、ジョークをまじえた絶妙な演奏で示してくれました。

 ウーン、大天才モーツァルトも一日にしてならず、なのでしょうか。

 モーツァルトの妙技に感嘆した一人の老ピアニストが、「私はこんなに汗水たらして苦しまなくてはならないのに!あなたにとっては戯れに過ぎませんね」ともらしたら、「いや!こうなるまでにはぼくもずいぶん苦労しましたよ」と答えた話を思い出しました(アンリ・ゲオン『モーツァルトとの散歩』(高橋英郎訳、白水社、p.215)。

 作曲でもモーツァルトモーツァルトなりに”苦労“したのかなあ、という気がしますが、皆さんはどのような感想をお持ちになりましたか?