4' AI君、君は新聞記者になれるか?

 AIは、さまざまの分野で人間の仕事を奪うのではないか、と懸念されています。たとえば、配布した表は、10~20年後になくなる仕事、残る仕事のトップ25を予測したものです。「物書き」はなくなる仕事には入っていませんが、AIに小説を書かせる取り組み「気まぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」などという企てまで、公立はこだて未来大学で2012年9月からスタートしています(https://www.fun.ac.jp/~kimagure_ai/

 私の出身である新聞の世界では、AP通信が2014年に企業の決算報告の記事を書かせるAIを導入し、日本経済新聞も「AIによる自動作成、完全自働決算サマリー、上場企業3,000社超に対応」なるうたい文句を掲げ、同様の記事作成を実施し始めています。(https://pr.nikkei.com/qreports-ai/

 「人間の記者が書いていたときは、四半期あたり300本の記事を配信していたが、人工知能によって、同じ期間で4400本もの記事を配信できるようになったという」(松尾豊『人口知能は人間を超えるかーディープラーニングの先にあるもの』(角川選書、2015.3)。

 ちなみに、松尾豊氏は東大大学院工学系研究科の准教授で、「日本のAI研究の奏斗」と言われる人で、日経とともに、AIの”教師”にあたるデータとして記事アーカイブを使用し、「記者が決算情報をどのように読み、記事にするかを学習させた」そうです(日経上記ホームページ)。
 
 形式もスタイルも同じの決算記事なら、記事アーカイブで学習したAI に原稿を書かせることなどたいしたことではないと思うけれど、「私」が実地に体験してきた取材記者の世界を、AI君、君ができるか試してみようじゃないか、と疑問がムクムクと湧いてきました。
 
 私は地方支局で、一年生記者として派遣されてきた「AI君」の面倒を見ることになった先輩記者。AI君には、この地域の絵図をすべて組み込んであるので、どこでも、自動で出かけて、帰ってくることができます。最初は新人記者が経験するサツ回りから始めてもらいましょう。まず、近くの警察で毎日のように報告される自動車事故の記事を書いてもらうことにします。

 これはいわゆる5W1H、すなわち「いつ(When)」「誰(Who)」が「どこ(Where)」で、「何(What)」を、「なぜ(Why)」「どのように(How)」したかが、明確に書ける単純な構造を持った記事の典型です。警察が発表してくれている広報文にはこの要素がおおむね入っているので、それを読み込んでこれまでのパターンにあてはめれば、交通事故の記事が一丁上がり、というわけです。

 「まるまる町の交差点で、ハンドル操作をあやまった車が他の車に衝突し、二人が怪我をした」なんて記事、よく見かけますよね。最近の、踏み切りで立ち往生したトラックに快速急行が衝突した事故も、基本的にはこのスタイルです。

 次に我らがAI君に先輩の私は、現場に行って状況を取材しなさい、と命じるでしょう。

 「取材とは何ですか」とAI君は聞きます。「現場で加害者と被害者の双方の言い分を聞くこと。目撃者の証言を集めること。警察の捜査の成り行きを追うこと」など、一年生記者に指示するのと同じことを指示します。
 
 さあ、AI君、どこまで、できるかなあ。皆さん、どう思いますか。