4、生命は宇宙から来たーフレッド・ホイルのパンスペルミア説

 本日は、佐藤勝彦他訳『ホ-キング最後に語る』早川書房)でも、ビッグ・バンに対抗する「定常宇宙論」の提唱者でありながら、皮肉なことに宇宙創成の大爆発の名付け親として紹介されている(p.22)偉大なるイギリスの天文学者フレッド・ホイル(1915-2001)の話をいたしましょう。

 定常宇宙論は、宇宙はどこから見てもいつも変わらない風景として存在する、とするもので、星々や銀河の距離が膨張によって遠ざかって行くビッグ・バン理論の有力な対抗馬になっています。この理論の利点は、宇宙の始まりを考える必要がなく、いわゆる「無」としての特異点を導入しなくても済むことです。しかし、宇宙の密度を一定に保つために、絶えず宇宙空間で物質が創成されるという必要が出てきます。無からの突然の宇宙誕生問題は避けられますが、無からの物質創成という私たちの常識に?がつく問題は、相変わらず抱えていることになります。

 フレッド・ホイルを有名にしているもう一つの説に、「パンスペルミア(panspermia)説」があります。パン(pan)は「幅広く分布する」、スペルミア(spermia)は、スペルナつまり精子のことで、幅広く生命の種がまかれる、の意味から「胚種分布説」と訳されています。ホイルは、宇宙空間に存在する無数の塵(宇宙塵)が、無機物ではなく有機物だとし、彗星の衝突によって地球に運ばれ、生命の源になった、と主張しているのです。

 空から落ちてきた天体が、災害や疫病をもたらしたとする話は、プラトンの対話編『ティマイオス』に登場していることを、ホイルはチャンドラ・ウイックラマシンゲとの共著『生命はどこからきたか』(潮出版社、1995.3)のエピローグで紹介しています(p.244)。

 「クリチアス、今は忘れられてしまったが、ずっと昔アテネそして人類に驚くべき出来事が起こった。…」の箇所引用に続いて、ホイルは同じような出来事がエジプトやローマ、中国でも記録があることを紹介しています。ホイルによれば、銀河系の星間物質のほとんどは水素ガスとヘリウムガス、そして、「生物の種」とも言える細菌レベルの大きさの有機物だと言います。そして地球には一日何百トンにのぼる彗星のかけらが落ちてきており、45億年~39億年前の巨大衝突後に、かけらに含まれた細菌から微生物が地球上に誕生した、と考えられる、と考えているのです(pp.58-76)。

 危険な放射線に満ち、極低温・極低圧な宇宙空間でも、細菌類が生存可能であることが次第にわかってきていることを、ホイルらは生物の種が彗星によって運ばれる可能性の根拠にあげています。「今や星間物質は細菌であると思われる」(同書p.67)と語るホイルは、1348~50年にヨーロッパで猛威を振るった黒死病(ペスト)や、1918年にアラスカの広い地域に流行したインフルエンザの記録などを分析した結果として、接触感染よりも、空から病原菌が降ってきたと考えたほうが理にかなっている、との論を展開しています(同書第十章「病原体による検証」pp.134-144)

 中国・武漢で発生したコロナ・ウイルスが地球上を席捲しようとしています。このウイルスも、ひょっとしたら天から降ってきたのかも知れませんね。どう思いますか。皆さん。