4、生成の担い手は市民-埼玉県志木市の大いなる実験

 前回は、指揮者不在のオルフェウス管弦楽団に関連して、皆さんからさまざまな声をいただきました。

 「不随意筋をつかさどる人間の自律神経系は、個々の組織が独立して身体全体のために働くようになっている。生命維持に必要がない創造性は、神が与えてくれた麻薬ではないか、などと思っている」
 「ラグビーはクラシック音楽のような分業型、ジャズはサッカーのような個々人が個別に判断して動く協同型」
 「意思決定の仕組みには、気脈でいくか、恣意でいくか、の二通りがあり、日本のナアナア型意思決定システムは、指揮者不在の楽団のようなものだと思う。オルフェウス管弦楽団が欧米で注目されるのは、彼らの世界が恣意によって決定される世界だったからだと思う」
 「いまや、分散型の意思決定が時代の流れになっているのではないか」「日本テレコムや住友海上火災は、課の縛りを廃し、一人の社員がいくつものプロジェクトに顔を出す仕組みを作っている」
 
 今回は、行政の指揮者である自治体の長が、市民に行政の運営を大幅に委ねた埼玉県志木市の実験的試みを検証していきます。発案者は、2001年6月に市長となった穂坂邦夫氏。前回お配りした資料で見られるように、穂坂氏が市長に就任した4ヵ月後に、市政運営に市民参画を促す「志木市市政運営基本条例」を制定、その一ヶ月後に条例の精神にのっとり、市政に対する調査・研究、提言を行う市民団体「市民委員会」を設置します。

 募集に応じて252人の市民が集まり、都市整備部会、教育部会、IT部会など9つの部会が構成されてスタートしました。市の927事業の見直しから始まり、予算の検証から予算の積算まで取り組み、「第二の市役所」と位置づけられたのです。
 
 市民を市政の中心とし、市長を頂点とする市の組織全体が、市政のアドバイザーになる、との革新的な試みは、NHKでの2回(クローズアップ現代、NHKスペシャル)を始め、KBS京都(どうする京都21)などで取り上げられ、全国的な注目を浴びました。

 市長の穂坂氏はこの試みを「「21世紀型の村落共同体」を目指すとし、市の業務のすべてを「行政パートナー」と名づける市民ならびにNPOにゆだねていき、619人いる市職員を20年間で約半分にし、最終的には30~50人規模の職員による「小さな自治体」を目標とする「地方自立計画」を策定するにいたったのです。
 
 保坂市長がこのような大胆な計画を進めようとした背景には、人件費関連経費がおよそ半分を占めてしまう自治体の歳出構造や、赤字になっても公共料金を値上げすればいいという安易な公務員の体質、自治体の現状にほとんどの市民が無関心である現実、などがありました。自治体と市民の双方の意識を根底から変えようとした試みが、「市民委員会」の設置や「地方自立計画」の策定だったのです。
 
 地方自立計画が予定通りに進んでいれば、この2016年は職員が400人を切り、市民の「行政パートナー」が400人を上回る記念すべき年になるはずです。現実はどうだったのでしょうか。穂坂市長は、2005年3月に勇退を表明し、同6月に任期満了をもって4年1期で退任、「市民委員会」は2006年3月をもって2期4年4ヶ月の活動を終えました。
 
 この大胆な試みに対する、皆さんの自由な評価を聞かせてください。