5の談論から NMB48とソクラテスの関係

 前回は、哲学的問答法について、皆さんのお考えを聞きました。お一人が、問題提起として、芳賀綏『日本人らしさの発見―しなやかな<凹型文化>を世界に発信する』(大修館書店、2013.12)から、西欧にもっとも特徴的にみられるユーラシア大陸型コミュニケーションのやり方が「tough-minded(タフ・マインド・凸型)でハード、日本型のコミュニケーションは「tender-minded(テンダー・マインド・凹型)でソフト、であるとの興味深い見方を紹介してくれました。ご紹介したG・ヴラストス分析によるソクラテスの論駁法は、相手を攻撃的にやりこめていく点で、このユーラシア型のコミュニケ―ション手法に極めて合致する、とのご指摘です。
 
 茂木は、ソクラテス問答法が教育の現場で見事に使われた例として林竹二『授業 人間について』(国土社、1990.11)を紹介しました。宮城教育大学学長だった教育学者の林竹二は、1971年2月19日に福島県郡山市立白岩小学校の6年生を対象に、「人間について」のタイトルでソクラテス問答法型の授業を行いました。林の教育における基本的な考え方は「授業は、子どもが授業の中に入りこんで、その客体ではなく、主体(主人公)となったときに、成立する」(同書pp.7-8)ことにあります。林の子どもたちへの巧な問いかけによって、子どもたち自身が自ら考えて「人間とは何か」を発見していく過程をそのまま記録し、子どもたちの声と合わせてまとめたものがこの著書です。

 メディアもまた私たちに「人間とは何か」「社会とは何か」「世界とは何か」を問いかけてくる「一つのソクラテス」であることを見てきました。新聞やテレビも見ないばかりか、若者が活用しているSNS型メディアさえも使わずにクチコミだけで情報を得ている21歳の女性のほうが、人間・社会・世界に潜む「本質を見抜く力」がかえって優れている例を紹介しました。逆に、最近になってユーチューブに嵌った中高年は、偏った情報に引きずられてそうした本質が見えなくなっている例も紹介しました。

 漫画雑誌『週刊ヤングジャンプ』が、アイドルグループNMB48のメンバー・須藤凛々花(19)さんに行ったインタビュー記事(49特大号、pp,180-181, 2014.11.20)を紹介しておきましょう。この漫画メディアを通じたアイドルの発言は、私たちにいったい何を「問いかけている」のでしょうか。

 「私は哲学者になるためにNMB48に入りました」「48グループの握手会は、ファンの皆さんとの“実存的交わり”です」「『ONE PIECE』は、正義とか人種とか重いテーマを突きつけてくる哲学書です」。誌面に踊る彼女の発言を一瞥するだけで、目が点になりませんか?

 「哲学者になるためには、大学の哲学科とかに行くんじゃないですか?」との記者の野暮な質問に、彼女は「ソクラテスは、机の前で勉強するだけでなく、街のみんなの意見を聞いて、それを広めて行きました。私もそういう偏らない、開かれた哲学者になりたいんです」とさらりと答えていきます。

 ソクラテスがこんなところにもいる! 正直なところ、驚いています。

 NMB48パジャマトークに登場する須藤さん(右端)をみてください。インタビューの話とこのパジャマ姿の彼女がどこでつながっているのでしょうか。
https://www.youtube.com/watch?v=UvZ-kRTbtng NMB48パジャマトーク