6、谷川俊太郎「モーツァルトを聴く人」(朗読と歌曲)

 今回は、谷川俊太郎の詩「モーツァルトを聴く人」とからめた、朗読と歌曲のコンサートです。
質問に答えて

朗読・お話 武田竹美(写真 右)
ソプラノ 宮部小牧 (右から2人目)
ヴァイオリン 坂本真理 左から2人目)
ピアノ 鳥井俊之 (左)

 今回も、宮部小牧先生が、朗読と歌曲が協奏する素敵なプログラムを用意してくれました。公演後の皆さんとのお話会で、受講生のお一人がいみじくも感想を語ってくれましたが、朗読の素晴らしさを武田竹美先生が再認識させてくれました。

 初めて恋をした娘が、友人たちに興奮した口調でその成り行きを話す、短調でも微笑ましい作品Der Zaubererでは、まるで自分が乙女であるかのようにドキドキ
させてくれました。谷川俊太郎の詩の朗読では、音楽の一瞬に入り込む彼の感性に自分の身が同期した思いがしたものです。

 今回は、ヴァイオリニストの坂本真理先生が、ゲストとして特別出演してくれるという最高のおまけまつきです。鳥井俊之先生のピアノとともに、モーツァルトが22歳のときにマンハイムで作曲したソナタ 第25番ト長調(KV301) を演奏してくれました。

 プファルツ選帝侯妃に奉げられた6つのソナタのうちの一曲で、モーツァルト自身が「ピアノとヴァイオリンの二重奏曲」と呼んでいる(1778年2月14日付の父への手紙)ように、ヴァイオリン伴奏型のそれまでのピアノ&ヴァイオリン・ソナタから飛躍した新境地の記念碑的な作品です。

 マンドリン伴奏のために書かれた可愛らしい歌曲Komm, liebe Zitheも、ヴァイオリンで伴奏してくれました。演奏会後の懇談では、マンドリン曲のピチカートを指ではさすがに大変なので、マンドリンの爪を使ったこと、また詩の中にあったダルシマという楽器の音のイメージをボールペンでやってみる!と、皆さんの笑いも誘ってくれました。

 坂本先生、ほんとうに、ありがとうございました。

講座風景2
 ところで、ダルシマとは、台形の箱の中に弦を張り,小さなハンマーで打弦して鳴らす民族楽器のことです。宮部先生が、マンドリンとダルシマの絵を掲げながら、二つの楽器の違いについて説明もしてくれました(写真 上)。

 最後に、宮部先生から、「受講生の皆さんからのアイデアを受けた参加型のコンサートもしてみたいのですが、いかがでしょうか」とのご提案がありました。
28年度のモーツァルト講座では、是非とも実現したいと思います。
 
SOA特設講座 モーツァルトの食卓Ⅲ~最後の晩餐~
谷川俊太郎「モーツァルトを聴く人」

2016年2月26日(金)10:45~     聖徳大学10号館14階

武田竹美先生

PROGRAM
作曲 W. A. Mozart
Pf. 鳥井俊之
朗読・お話:武田竹美
1. 「Exsultate jubilate」(KV 165)
   Exsultate jubilate
  モテット「踊れ喜べ、汝幸いなる魂よ」より
   1. 踊れ喜べ、汝幸いなる魂よ
2. Oiseaux, si tous les ans (KV 307 / 284d)
鳥たちよ、毎年    
3. Dans un bois solitaire (KV 295b)
  寂しい森で 
4. Die Zufriedenheit (KV 473)
  満足 
5. Komm, liebe Zither (KV 351 / 367a)
  おいで、愛しいツィターよ
6. Sei du mein Trost (KV 391)
  私の慰めであれ
7. Der Zauberer (KV 472)
  魔法使い
8. ヴァイオリン伴奏のクラヴサンまたはピアノのソナタ 第25番(KV301) 第1楽章
9. 谷川俊太郎 詩集「モーツァルトを聴く人」より
  「人を愛することの出来ぬ者も」
10. 「Vesperae solenne de confessore」 Laudate Dominum (KV 339)
   「証聖者の荘厳晩課」より  主をほめ讃えよ
11. 谷川俊太郎 詩集「モーツァルトを聴く人」より
   「モーツァルトを聴く人」
12. 「Il rè pastore」 L’amerò (KV 208)
  歌劇「羊飼いの王様」より  彼女を愛そう

曲目解説
1. Exsultate jubilate ~Exsultate jubilate
ソプラノとオーケストラの為の宗教曲で、15分ほどの作品の最後は「アレルヤ」で締めくくられます。モーツァルトの最も有名な作品の一つといえるでしょう。今日はその第1曲目を演奏します。

2. Oiseaux, si tous les ans
 モーツァルトは、その作品数全体からすると数は多くありませんが、愛すべき歌曲を残しています。今回は比較的初期の作品を集めました。その殆どがドイツ語ですが、有名な「静けさは微笑みながら」はイタリア語、ここで始めに取り上げる2曲はフランス語で書かれています。
(大意)
 鳥たちは毎年、冬が来ると住む場所を変える
 常に、恋の季節である春を過ごしたいのだ

3. Dans un bois solitaire
(大意)
 寂しい森で、かつての恋人に似た美しい少年に魅せられてため息をついた
 だがそれはキューピッドで、目覚めた彼の復讐の矢によって昔の恋がまた蘇る

4. Die Zufriedentheit
(大意)
 私の心は安らかで満たされ、人生を喜び、恋の痛みでさえ心地よい
 大きな領地にも満足しない英雄たちは争ってばかりだが、
墓場の広さは私と同じだろうに

5. Komm, liebe Zither
 マンドリン伴奏のために書かれた可愛らしい歌曲です。
今回はヴァイオリンとピアノで演奏します。
(大意)
 おいで、愛しいツィターよ、お前に僕の痛みを打ち明けよう
僕の代わりにこの想いを彼女に伝えておくれ

6. Sei du mein Trost
 かつては「An die Einsamkeit 孤独に寄せて」という題名でしたが、新全集では歌い出しの言葉がタイトルとなっています。小説の中の詩に付けられた曲です。
(大意)
 私の慰めであれ、悲しみよ、孤独よ
 傷ついた私をお前は慰め、深い安らぎをもたらしてくれる

7. Der Zauberer
 初めて恋をした娘が、友人たちに興奮した口調でその成り行きを話す、短調でも微笑ましい作品です。
(大意)
彼に連れられて、ドキドキしながらもうっとりと茂みに坐り、もうどうなるかと…
彼はきっと魔法使いだわ!

8. ヴァイオリン伴奏のクラヴサンまたはピアノのソナタ 第25番 第1楽章
 ヴァイオリン伴奏のピアノのソナタというタイトルですが、どちらの楽器も主役である二重奏ソナタといった作品で、2つの楽章からなります。1778年マンハイムに滞在していた時に、選帝候の宮廷楽長シュースターのソナタに影響を受けて、この形式による6つのソナタを書きました。

講座風景

9. 谷川俊太郎 詩集「モーツァルトを聴く人」より
 谷川俊太郎は母の弾くピアノを聴いて育ったそうで、この詩集からは、人生の様々な場面でモーツァルトの音楽が共にあり、詩人の心象風景の一部であり、詩を生み出すもの、魂の拠り所となっていたのではないかと思われます。この詩集は、本と、CD付の本の両方が発行されていて、CDでは谷川俊太郎の自作朗読と、それぞれの詩に関わるモーツァルトの作品が収録されています。あとがきと解説の中から、詩人の言葉を以下にご紹介します。
 「音楽はなくてはならないもの」
 「詩に対する疑問と音楽に対する疑問が、そのまま自分という人間に対する疑問に結びついている」
 「音楽が私にもたらすある特別な魂の状態、~中略~それは私が生きていく上でどんな働きをしているのだろう―そんな問いが私をとらえて離さないのです。」
 「音楽は言葉以前のどこともいつとも知れないところへ私たちをいざないます。
~中略~そのようにして音楽に救われた経験を私は幾度ももっています。」

10. Vesperae solenne de confessore ~Laudate Dominum
 モーツァルトの書いた2つのヴェスペレ(晩課)のうちの1つで、この「主をほめ讃えよ」は全6曲中の第5曲にあたり、流麗な旋律が美しい曲です。本来は合唱が必要なのですが今回は割愛し、オーケストラ部分のヴァイオリンを加えて演奏します。

12. Il rè pastore ~L’amerò
 「羊飼いの王様」はモーツァルトの19歳の時に作曲したオペラで、初期の作品らしく、技巧的で長さのあるアリアが並んでいます。この曲を歌う、本来の王位継承者である羊飼いアミンタは、ソプラノによって歌われるズボン役です。王位を継ぐよう求められますが、恋人である羊飼いの娘エリーザへの想いは変わらないことを歌っています。オーケストラの中のソロヴァイオリンのパートと共に演奏します。