8、「動物的に食べる」ことの哲学

 お配りしてある『動物たちの自然健康法』16章「健康になろう」を読んで、皆さんは何を感じましたか。私自身は、人類が農業に依存する食生活を始めてからまだ500世代しかたっていないのに、狩猟採集民の時代が10万世代もあり、現代病の多くは私たちの身体のつくりが農業依存の栄養採取に適応できていないことから起こる、との指摘に新鮮な驚きを感じました(pp.317-318)です。

 先史時代人は野生のチンパンジーやゴリラと同じような、新鮮な生の果実、ナッツ、種子、葉、など、一年間に100~200種類もの植物を食べていたそうです。多様な植物摂取は、ビタミンやミネラル、多量な繊維質、抗酸化物質を体内に取り込むことになり、癌や心臓病、糖尿病、骨粗しょう症、高コレステロール症などの発症を抑える効果がある、と言うのです。つまり、脂肪や糖類に頼り、繊維質の少ない現代社会の食生活は、原始人類の食生活に比べるとずっと不健康だ、ということです。
 
 私たちの身体では、酸素を使ってエネルギーを得る過程で、その酸素の一部が細菌やウイルスなどを酸化(サビつき)して退治する活性化酸素(過酸化水素etc)に変わります。疲れがたまると、この活性化酸素が逆に細胞をサビつかせて、老化の原因となります。酸化させないようにする物質が抗酸化物質で、ごぼう茶に含まれているサポニンがその一つの代表です。

 一時期、南雲吉則医師が自身の体験でごぼう茶のアンチ・エイジング効果を強調し、自ら実践してその若々しさが話題になりました。恥ずかしながら、私自身、ごぼうを細く削って天日干しにし、それを炒ってごぼう茶にしたものを毎日飲んで健康を誇示、「南雲信者」を自認し、仲間内でしきりに「ごぼう茶」効果を喧伝したものです。
 
 時が変わって、最近の南雲医師は、えごまオイルで口をゆすぎ、顔と小鼻を同オイルでマッサージ、かつて一日一食の宣言を変更して、朝はバターコーヒー、昼はオメガ脂肪酸やポリフェノールを含むクルミや甘皮付きのアーモンドをアンチ・エイジング対策に食べている、そうです。

 何やら、古代人やゴリラなど野生動物の食生活に近付いているような南雲医師ですが、肉体を若く健康に保つ食事の例としてよく話題になるのが、アフリカ・マサイ族の「牛乳、ヨーグルト、牛の血」だけしか食しない生活です。野菜などの植物をほとんどといって採らない彼らが、ビタミンC不足にもならず、文明社会人の現代病に悩まされることがなく極めて健康なのは、まだ未解明の不思議の一つでしょう。
 
 というわけで、本日は、皆さんの健康療法を紹介いただき、動物たちの食事との比較を試みたいと思います。お一人からご紹介いただいた宮脇昭『人類最後の日―生き延びるために、自然の再生を』(藤原書店)の「3 もし緑の植物がなくなったら」には、植物の光合成で炭水化物(糖分)に変換される炭酸ガスが、植物自身とわたしたち動物類の活動で再び炭酸ガスとなって大気に放出される「生物共同体」CO2大循環のあり様(pp.124-125)が描かれています。
 
 もうお一人は、プラトンの名作『饗宴』をヒントに、この生物共同体における人間の役割を問うSDGs(サステナブル・ディベロプメント・ゴールズ、持続可能な開発目標)の問題に切り込みます。「愛」はいかにしてサステナブル社会の構築に向かわせるのでしょうか。