8からの談論 民主主義に物申す

 事前にお渡ししたE・M・フォースターの『民主主義に万歳二唱』と、ジャック・アタリ編著『いま、目の前で起きていることの意味について―行動する33の知性』を種として、民主主義について談論に花が咲きました。

 「共産主義か民主主義かといった対立状況から、マスコミの多様化とソ連邦の崩壊のあと混沌としてきている。アベノミクスにしてもあれは賛成、これは反対、世界中のだれもが自分の考えを主張してまとまりがない。民主主義に変わる政治システムを考案しないと、混乱は永久に続く。民主主義は死んでしまったと」

 「民主主義で権利と自由を得た。この二つをいま本当に考えなければならない、と。人としてどのように生きるかを、子どもたちにどのように教えていくのか、その大切さをフランスの番組を見て思いました」

 「40年ほど前ですかね、ソ連のブレジネフ体制のとき、3年ほど共産主義の体制の中でモスクワで仕事をした。かごの鳥の監視体制だった。外国人はすべてどこにいても監視されている。共産主義は悪と思っていて、帰国後、体制が崩壊したとき、世界は平和になるのだな、と期待していたが、現実はそうはならない。二つの主義がなくなると、ある意味での緊張関係がなくなっている。個人においても、国家においても、組織においても、牽制の仕組みが働くメカニズムが必要なのではないか」

 「川崎の殺害事件は、明らかにISの影響を受けている。川崎国の名で、自分たちが法律だ、と。自分たち一人一人がメディアになるITの時代、直接民主主義が可能な時代になっている。ポピュリズムと民主主義とのどこに民意があるのか、と。決められない政治が続くと、どうしても強いリーダーが求められる。白紙委任のミニ大統領的な首長がでてきて、その最も代表的なのが小泉。憲法は民衆から為政者への命令なのに、そこがないがしろにされつつある」

 「ポピュリズムは、お任せ主義ということですかね」(茂木)
 「国民の共通の敵を仕立てて、国民を熱狂させる」

 「数年に一回の選挙で選ばれた人たちより、行政のほうが強すぎて行政の言いなりになっているところに問題がある、と社会学者たちが新聞に書いている。住民参加で物事を決めるようにしないといけないのではないか。政治がお任せ主義になっているのは、信頼しているということもあるかもしれないが、少なくとも選挙にはいくべきだ、と思う」

 「民主主義は、不都合なことを調整していくのがいいのでは。ほどほどがいい。ベストよりベターが民主主義」

 「ジャック・アタリ編著の資料のなかで、ゴーシュは『民主主義が多数派による独裁なら、それは民主主義ではない』と言っています(p.17)。国家権力に対するものが民主主義だと思うが、現在の日本は国家と国民がお互いに入りこんで、一体化してしまっている。たとえば、年金や健康保険などの問題を見ていると、それがなくなれば私たちの生活が立ちいかなくなる。これでは、国家を変えようとする気がなくなるのではないか。この国民と国家の一体化によって、民主主義が機能しなくなっている」

 「トクヴィルは、民主主義の暴走、といっていますが…」(茂木)
 「国家を変えられない民主主義になっているのではないか。暴走や独裁はたぶん日本では起きないと思いますが」

 「単純に考えて、優秀な人は少数派で、そうでない人は多数派。多数決に任せたら、良い国家にはならない。先見性、決断力、実行力のある人がトップになればいいが、優秀でない人が多数派なのだから、そういうことは起きえない理屈になる。新聞に面白い話が出ていました。ある五階建てのマンションで本当にあったといわれる話ですが、五階の住民が投票方式にある提案をした。それは、エレベーターを使わない一階に住んでいる人が全額を費用負担するという案だった。すると、二階以上の人がみな賛成に回って、そのように決まってしまった。極端な例だとしても、多数決は困ったものだ。どの体制がいいのか、ああでもない、こうでもないと言えている状態がいいのかな、と」
 「一階の人を説得するために考えた作戦ではないですか。そのあと、それでは困るでしょう、とある程度一階の人も分担するようになる」

 「多数決は最善を選ばない、のは確かでしょうが、最悪も選ばない。両極端を排する。それが、民主主義のいいところでは。フォースターの本を読んでいくと、なぜ三唱できないかの理由を述べている。一度目は多様性を許す、二度目は批判を許す、から。しかし、現実の世界は暴力に支配されるところがある。民主主義は暴力に勝てない。だから、三唱はしない、と書いています。『私の信条』のところです」

 「配給制度を見てみると、戦前にも戦後にも日本では社会主義的な制作をしている。アメリカから与えられたというより、日本人の温情性が民主主義に合っていたのではないか」

 「ワイマール憲法が気になっていた。当時もっとも民主的な憲法と考えられたにもかかわらず、十数年でナチズムが生み出されてきた。ジャック・アタリが自由と不安定は表裏一体(p.10)と書いている通り民主主義は不安定、お任せになって独裁へと移行してしまう。政治に対して、ときの権力者に対してチェックしていかないといけないのに、投票率の低さは何とも気になる。山形県の15歳の中学生が新聞に投稿していて、民主主義は言いかえるとみんなで決めることです、と言っています。これは、まさに政治哲学を語っているのではないか。若い人の感性はすごいと思います」

 「いい知事やいい町長を選ぶと、人びとが活き活きとしてくる。いい指導者に恵まれるためにも、選挙は大事だと思う。あとは、住民参加を認める体制を維持できる仕組みをつくるのが大事だと思う」

 「川崎の事件の始めの一歩は何だろう。いまの 世の中、情報を知っているのと知らないのとがいて、一口に国民といっても随分違っている。知らぬが仏がいいのかな、とも思えるし…」